日本の橋は重くて高い

◆日本の橋は重くて高い

明石海峡大橋の最大支間長は1991mで世界一である。斜張橋では多々羅大橋が890mで世界第5位、今年の5月22日から開業を始めた東京スカイツリーは、高さ634mで世界一高い。

東京工業大学の三木千壽教授の講演録(2010年RCCM登録更新講習会、建設コンサルタンツ協会)を読むまでは、我が国の鋼構造の技術は世界一と信じていた。

ところが、

①アメリカに比べて日本の橋は「重たくて高い」。アメリカの橋に比べて鋼重は150kg/m2重たくて、工事費は3倍高い。

②日本の技術者は、マニュアルエンジニアリングで、技術とプライスで競争しない世界にいる。

これが現実のようである。

 

◆どん詰まりにならないために

今にどん詰まりになる。そうならないためには、

①コスト縮減が歓迎され、技術競争がビジネスにつながる環境にすること。

②示方書や便覧を無視する勇気(性能規定型設計の実現)と説明努力が必要。

③技術的な根拠の提示や保証が重要な問題。

④海外に目を向け、国際的な競争的環境の世界に参入しなくてはいけない。

と提言されている。

 

◆日本の橋が重くて高い理由

三木教授は、日本の橋が「重くて高い」理由として次の点を指摘している。

①昔は力学分野の最新の成果を設計に取り入れてきたが、一度取り入れると直すことをしない。

②飛行機や船、自動車ではFEMによる設計が当たり前であるが橋はやらない。

③ラーメンの隅角部、中間ダイアフラム、トラスの格点など今の設計式は実際の挙動と合わないことを示し続けているにも関わらず変わらない。

④日本の技術はガラパゴス化している。新しい技術を取り入れようとしないし、技術開発に無関心になっている。

 

◆ラーメン隅角部の設計

ラーメン隅角部の設計には、1960年代の奥村先生の研究成果がいまだに採用されている。連続箱桁橋のデッキプレートにBHS500という高強度鋼を使用しても、現行の設計法を用いると厚さが55mmになるがFEMで設計すると16mmになる。ダイヤフラムは86mmが16mmに、フランジは86mmが33mmにできた。

技術者がおかしいと思わないのは、技術力のなさと無関心の結果である。

 

◆中間ダイアフラムの設計

箱桁橋の中間ダイヤフラムの設計式は、示方書にはないが便覧に示されており、その式で標準的に設計されているが、設計式の仮定が非現実的なものになっている。その結果、ダイアフラムの鋼重が鋼桁の20%を占める場合もある。

ダイアフラムの間隔を3m、9m、15m、40m、120mと変えてFEMで計算してみたが、応力成分はほとんど変わらない。中間ダイアフラムが本当に必要なのか疑問。

 

◆トラスの格点

トラスの格点のガセットの板厚を算定するのにt=20P/bという式が使われているが、断面力Pをガセット幅bで割ると板厚tが求まるというのはおかしい。そもそもディメンジョンが合っていない。

この式は、30~40年前に、当時のトラスの板厚をチェックしてプロットし、一番安全側に引いたらこの式が出たということで、鉄道橋でも道路橋でもいまだにこの式が使われている。

トラスの格点はピン構造と仮定しているが、実際は違う。また、トラス部材の軸線を合わすようにしているが、やる必要はない。軸線を合わせなければ二次応力が出ると思っているが、出る訳がない。軸線を30cm、1.2mとずらしてFEM解析したが、応力はほとんど変わらない。

 

◆メンテナンス

マニュアルエンジニア的な発想では、メンテナンスの問題にはついていけない。