人間尊重の組織づくり
トヨタビスタ高知 社長 横田英毅(ひでき)
平成15年6月に高知県庁での県職員研修会テキストより
新しい時代の到来(激変の時代)
終身雇用の崩壊,年功序列型社会の崩壊,少子高齢化,急激な人口減,教育水準の低下,中国および新興諸国の台頭,グローバル化の進展,規制緩和から規制撤廃へ,財政赤字,資源・エネルギーの制約,環境破壊問題の深刻化,銀行ペイオフ問題,テロ・SARS・北朝鮮問題,実力主義,成果主義の台頭,国際競争力弱化,永続的デフレーション,競争の激化,国債暴落の危機,公共事業大幅削減,事業活動の高コスト化,精神的デフレート
中国及び新興諸国が台頭してくることによって,日本がいくらインフレにしようとしてもそうならないデフレという状況に陥っている
生き残る組織は,
業界ナンバーワンの企業。ナンバーワンでなくても業界の中でオンリーワンまたは本物と言われる企業。
生き残る組織の共通点
社員重視,お客様本位,社会的責任を果たしている,社会との調和がとれている,独自能力を持っている
勝ち組(生き残り)の特徴
危機意識を持ち,時代の変化をとらえる努力をしている。時代・市場の変化を的確に予測し,挑戦すべき目標を掲げてチャレンジし続けている
負け組(消滅)の特徴
過去の成功体験にとらわれすぎた現状維持で,ゆでガエル状態(カエルを熱い湯の中に入れるとビックリして跳ねて逃げ出すが,水に入れてから徐々に暖めて熱湯にしてゆくと気付かずに,ついにはゆで上がって死んでしまう。温かくてポカポカしている先には,気付かぬうちに手遅れとなる事態が待っている)になっている。
最後に生き残るのは,賢いものでも強いものでもない。常に変わり続けたものだけである。
変わり続けることができる組織,変わり続けることができる人というのは若さがある人
若いとは,強い意志,行動力,チャレンジ精神があり,情熱を持った人
常識,知識,マニュアル,成功体験は変化の激しい時代に通用しなくなる。このような時代に必要なものは若さである。
⇒変わるのは大変。松山事務所を縮小するのは大変
良い行動を起こしたときにしか良い結果を手に入れることはできない。良い考えがなければ良い行動は起こすことができない。 良い考え×良い行動=良い結果
一番大切なことは,一番大切なことを一番大切ににすることです。
WantsよりもNeedsを大切にすること。
Wants(欲する)とは,見える物,量,Needs(必要)とは,見えない心,質。
社員のWantsは給与であるが,社員のNeedsは技術力や職業能力,技術資格
問題(課題)とは,理想(あるべき姿,目標)と現実(悪さ加減)のギャップである。
理想が高いほど問題が大きい。何も問題がないと言うことは,高い目標を持っていないこと。
問題対処でなくて問題解決をすること。
トヨタビスタ高知では23年間自動販売機をおかずに冷蔵庫を置き,上に貯金箱を置いてある。1ヶ月に1度スタッフが棚卸しをしている。あるときに,お金が合っているかとたずねると,3万円なければならないが足らないのは3千円である。10%足らないが仕入れ値が15%レスなので問題ないという返事であった。目標をどこに置くかによって問題が違ってくる。また,自動販売機を入れるとお金の勘定は合うが問題は解決しない。
木こりと旅人の話
ある旅人が木こりの隣を通って「一休みをしてノコギリの目立てをしたらどうですか」と話すと,木こりは「私は朝から晩まで一日10時間も一生懸命に木を切り倒しているのですがあまりはかどりません」
1時間5本とすると1日50本。半日休んでノコギリの目立てをすると,その日は25本であるが,1時間に7本とすると次の日は1日70本。あっと言う間に半日休んだ分を取り戻したという話である。汗水垂らして一生懸命働くのが問題対処。目立てをするのが問題解決。
何が問題の真因かを掴むことが大事。なぜ(WHY?)を繰り返すと真因にたどり着く。
機械が動かなくなった→なぜ→ヒューズが切れた→なぜ→オーバーロードがかかった→なぜ→軸受け部の潤滑が不十分であった→なぜ→油圧ポンプが故障したから→なな゛→日常点検がキチッとできていなかったから(真因)
問題(現象) 問題対処 問題解決
木を切り倒す能率があがらない 朝早くから夜遅くまでがんばる ノコギリの目立てをする
空腹の人がいる 魚を1匹与える 魚の釣り方を教える
難民が出た 援助物資を送る 自活できるように指導する
水害が多い 堤防を高くする 植林し,山の保水力を高める
問題対処は短時間で効果が得られる。問題解決はすぐに結果が出ないが理想実現には必要不可欠な長期戦略である。問題対処と問題解決の両方が大事。
ゴーンマジックとは
2年ちょっとの間で日産の利益を大幅に改善させたカルロス・ゴーンに,そのマジックをたずねると
「私は特別な人間ではありません。魔法は使えません。重要なことは,全ての問題には必ず解決策があるということです。解決策さえ上手く捜すことができれば,日本人は非常に優れた実行力があります」と言った。
経営とは問題を発見してその解決を探り,実行すること。問題対処よりも問題解決が大事である。
会員増強とは
会員増のキャンペーンをしても会員は増えない。会員が強くなる(質が良くなる)と会員が増える。会の質を高めることが問題解決である。
価値前提
目標とは見える物,量(事実)。目的とは見えにくい心,質(価値)。価値は目的で追求するもの。事実とは目標で達成するもの。
日本には民間企業が270万社ある。100年以上続いているのは6600社。価値前提の企業でないと30年ぐらいで消えてしまう。
成長の4要素
考える,発言する,行動する,反省する
やる気の4要素
欲望(ハングリー精神),怒り,憧憬(あこがれ),好き
ひとり一人の社員が成長すれば企業は成長する
人間にとって一番不幸なことは,誰からも必要とされないことである。(マザーテレサ)
従業員満足
自己実現
仕事を通じて自分の成長を実感できる。自主性が尊重されている。経営に参画できる。
自我地位
結果が明確に評価される。重要な仕事を任されている。お客様から感謝される。
集団帰属
勤務先に誇りが持てる。お互いが助け合う職場である。コミュニケーションがよい。
安全秩序
永続性があり,安定した会社。仕事によるけがや病気の心配がない。清潔で快適な職場環境。
生存安楽
無理な残業がない。働きに対して給与がよい。休みを十分とれている。
ビスタ高知の社員満足度は高いが,給与は県庁職員の同じ年代の方に比べると大体6掛け。残業は多いが,休みは年間100日とっている。社員が労働条件を良くしようと自覚をしながら取り組んでいる。