儲かっていない会社の共通点

 

      
永守重信(日本電産社長)
 『致知』2011年10月号 特集「人物を創る」より

儲かっていない会社にはいくつか共通点があるのです。
一つは社員の士気が落ちています。
原因をそこの経営者に聞くと、我が社は労働組合が強くてというふうに言い訳をするけれども、私に言わせたら八十%は経営者の責任です。
経営者がしっかりやっていたら労働組合は強くならないと。きちんと払うものを払っていないし、職場環境も悪いから労働組合が強くなっているのです。
それから、会社の士気が落ちていると当然工場は汚いですよ。事務所も汚い。電話の応対がいいかげん。マナーがなっていない。つまり6Sができていないのです。
整理、整頓、清潔、清掃、作法、躾の六つのSのことを我々は6Sと呼んでいるのです。
例えば、ダメな会社に限って便所掃除の人を雇っています。
私は全員辞めさせて他の仕事に回すのです。社員がやらないとダメですよ。
掃除の人がやってくれると思うから汚すわけで、自分たちが掃除すれば気をつけて使うのです。私も自分で使った便所は全部自分で掃除していますし、新入社員にも一年間便所掃除をさせています。
いまは有名になりましたが、昔はこんなことをさせるのかと言って一日で辞める人もいました。そんな人であれば当社には必要ありません。便所掃除もできなかったらどうにもならないですよ。
会社が汚いと、ものを粗末にしてあちこちに部品が落ちたままになります。それからすぐ休むようになるのです。
今日はしんどいとか。有給休暇を消化してなお休むから、出勤率が九十%を割ってきます。
ということは、二十人でものをつくるラインがあったら、いつも二十二人置いておかなければならなくなる。余分に人を採用しなければならなくて生産性が落ちるわけです。
出勤時間にしても、八時半始業だったら、ギリギリの八時二十九分に会社に駆け込んでくる。一応セーフだけれども、そこからロッカーへ行って着替えてから機械に電源を入れる。
冬だったら十分から二十分くらい慣らし運転をしないと機械の精度が出ませんから、結局仕事が始まるのは九時になってしまう。
帰りは逆に、終業の三十分前にはもう引き揚げ始めている。朝夕合わせて一時間のロスです。
それを時間いっぱい働くようにするだけで、十%の赤字が黒字になるのです。
また、儲かっていない会社はだいたい購買が接待を受けてものを高く買っていますから、
それを妥当な値段に戻せばさらに十%黒字になる。
ですから、私がこれまで買収した会社で二年目に最高益になっていない会社はないのです。
一番早かったのは日立製作所から譲ってもらった日本サーボ(現・日本電産サーボ)で、
十一か月で創業六十五年来の最高益になりました。
社長も社員も元のまま。新製品だってすぐに出るわけがないから何も変わっていない。
それであっという間に最高益です。